明法ニュース 教科指導

SPP第2弾! 「現生生物をとおして太古の化石生物を復元する」 ①

教科指導

SPP2 047.JPG 1月19日(土)に,科学技術振興機構(JST)によるサイエンス・パートナーシップ・プロジェクト(SPP)の支援のもと,杉並科学館との連携講座を実施しました。
本企画では,化石として有名な「アンモナイト」を題材に,科学者たちがどのような着想や方法で化石を解析し,太古の生物の形態を復元しているのかを疑似体験させます。

SPP2 033.JPG 「手元にあるアンモナイトは,今からおよそ1億5000万年もの前に実際に海洋に生きていました。」講師の先生は,生徒をアンモナイトの世界へテンポ良く導入します。
 「アンモナイトは,海の中ではどのように暮らしていたのでしょう?」という質問をし,すかさず取り出したサザエやホタテ,アワビの貝殻を水槽の水の中へ浸します。「沈みます。これらの貝は底生ですね。」
 「これは,アンモナイトに近縁のオウムガイの殻。」それも水の中へ。「浮いた~!!」生徒から驚きの声。「太古の海で,アンモナイトは浮遊生息していたことが推測できるね。」
 アンモナイトは,サザエなどの巻き貝のようにくるくると巻いた構造をしていますが,化石の断面をみると,オウムガイと同じく殻のなかに区切られた部屋(気室)をもちます。
 アンモナイトは,内部が空洞の巻き貝のなかまではなく,内部に気室をもつオオムガイに近いなかまと結論できるのです。
SPP2 041.JPGこのように現生動物との比較から,化石生物の行動・生態を明らかにすることができることに生徒は驚きを隠しきれない様子でした。

 次に,生徒はひとりに一つ渡されたアンモナイトの化石をヤスリで研磨して断面標本の作製に挑みました。実習になると,生徒はみな,黙々と作業に集中し,まるで化石職人になったようです。写真は生徒の作品です。隔壁に閉ざされた気室がしっかり観察できます。

 最後に,「アンモナイトはなぜ絶滅してしまったのでしょう?」という問いかけ。
 アンモナイトの断面標本を観察すると,真ん中に赤ちゃんのときの名残を観察することができます。そのサイズは1mmにも満たないもので,ふ化した頃には水面に近いところで生活していたと考えられます。一方,現生のオウムガイは,ふ化した頃にすでに数cmもの大きさがあり,海底近くで暮らしていたことが考えられます。この差が,今から6500万年前の隕石衝突時に,一方を絶滅させ,一方の生命を連続させたというのです。
SPP2 049.JPG 「これは,まだ仮説の段階です。このように化石や現生の生物をいろいろと観察して,太古の生物の生き様を推測するのが古生物学。この分野には,まだまだ分からないことがいっぱいです。」
古生物学への誘いをされた生徒はまんざらでもない様子。このなかから将来の古生物学者が誕生するかも知れません。

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