明法ニュース 校長・教頭

ピンチはチャンス② ~当たり前に、「ありがとう」~

校長・教頭

ピンチはチャンス② ~当たり前に、「ありがとう」~

 もし、明日から電力不足による計画停電で電気が使えなくなり、お気に入りのテレビが見られなくなってしまったら?もし、断水で水道水を使えなくなってしまったら?もし、ガスコンロの故障でキッチンコンロが使えなくなってしまったら?もし、これら3つの状況が同時に起こったら・・・。このような「もし」は、平時においてはもちろんあり得ない話。ただ、本校の海外研修の1つ「カンボジア、村の小学校で教育ボランティア」では、敢えてこのような「電気・水道・ガスのない世界」を生徒たちに実体験してもらう。途上国の農村に民泊をしながら、自分たちにとっての「当たり前」が存在しない中で、参加者たちは「豊さ」や「幸福」の意味について再考する。

 今日、学校から「当たり前」が消えてちょうど2ヶ月半になる。「クラスの友人に会えない」「部活や同好会の仲間に会えない」「授業が受けられない」ー 新入生にいたっては、新しい制服に袖を通す機会もなく、もちろん新担任や新たな級友と直接顔を会わすことすらできていない。多くの当たり前が、ここ明法の学び舎からも姿を消している。アフターコロナという言葉は、いつの間にかウィズコロナに衣替えをし、どうやら当たり前の学校生活が戻ってくるのはまだまだ先の模様。

 そんな前途に光明となっているのが、ICTを活用したオンライン教育だ。本校でも、学年・クラスのSHRや時間割編成による授業など、いよいよ全学的なオンライン教育に舵を切った。担任団や各教科の教員は、互いにGoogle ClassroomやMeetの活用法をオンラインやオフラインで学び合い、日々研鑽を積んでいる。一昨日は、デジタル機器をいささか苦手としつつも、生徒たちに自らの授業動画を届けるために、久しぶりに教壇に立ち始めたベテランの先生の姿に心を打たれた。今日は、まだGoogle Classroomに入れていない生徒の家庭に一軒ずつ電話連絡を入れる担任の先生の姿に勇気を頂いた。

 今後は生徒たちが少しでも学校の当たり前や生活・学習のリズムを取り戻し、画面越しではあるものの新しいクラスの仲間や担任の先生、教科担当の先生たちと学校再開に向けた助走期間に入ってくれることを願う。「早く学校が始まってほしい!」、皆がそう切望する今だからこそ、これまでの「当たり前」を振り返り、感謝の気持ちを大切にしてほしい。「当たり前は当たり前じゃない」、一昨年のカンボジア海外研修から帰国した男子生徒が感想文に記した一節が想起される。学校生活とは実は「有難い」存在。そう感じられる今があるからこそ、学校を再開できた暁には、「ありがとう」の心を胸に校門をくぐりたい。
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